―自給飼料の生産、未利用資源の活用、投資の節約etc.……―
低コスト化を追究し、
安定した和牛繁殖経営を確立

―鹿児島県大崎町・藤岡数雄、美江子さん夫妻の経営―

 「自分で牛舎を作り、ただ同然で手に入る焼酎粕を活用するなど低コスト生産に徹する」のが、藤岡数雄、美江子さん夫妻の和牛繁殖経営。

 繁殖雌牛75頭の大型経営ながら、ゆとりある生活を実践しかも高収益をあげる。こうした経営が評価されて、今年度の全国優良畜産経営管理技術発表会で農林水産大臣賞の栄誉に輝いた。

 藤岡さんの経営は鹿児島県大隈半島のほぼ中央部、曽於郡大崎町に立地。この地域は基盤整備された畑地が広がる純農村地帯で、わが国を代表する子牛生産地域でもある。

 藤岡さんは昭和41年農業高校卒業と同時に後継者として就農した。当時の作目は甘藷、陸稲、園芸、軽種馬生産だったが、50年に結婚した後、経営を移譲されたのを機に、軽種馬生産を中止。代わりに繁殖牛(黒毛和種)7頭を導入、間伐材で牛舎を手作りし、子牛生産を開始した。

 以来、段階的に規模拡大し、現在、繁殖雌牛75頭飼養し、年間75頭の子牛を出荷する。牛舎の建築はできるだけお金をかけないという初志は一貫しており、間伐材を利用してほとんど自分で作り、投資を抑える手法をとる。

 こうした投資の節約は、繁殖牛の整備面でもみられ、自家保留を主体に増頭し現在60%が自家産。このほか、借地活用による自給飼料(ローズグラス、大麦、イタリアンライグラス)の生産拡大(延べ19.5ha)、イモ焼酎粕の活用、省力管理の創意工夫などにより低コスト生産を実現している。

 省力管理の例をいくつかあげると―

 @平成7年からラップサイレージ体系を導入して労働力を軽減、さらにラップサイレージ切断作業を容易にするため廃材とタイヤで回転盤を製作した。

 

 A集合飼育による管理の効率化を目指し哺育ロボットを導入した。

 B除角にも早くから取り組み、群管理を容易にして省力化を図った。


 C古バキュームカーを飼槽に活用し、自分で配管した自動給餌システムで省力化を図った。

 D母牛に頭絡に種付け済みは黄色テープ、妊娠鑑定済みは赤色テープをつけて、家族全員が管理・観察しやすいようにした。


 E県畜産試験場の昼間分娩技術の試験データを参考に1日1回給与を実践し、90%以上を昼間に分娩させている。

―などだ。                                                      
                                                                



 その一方で、従来から畜産会の経営診断を受診、経営調査事業にも協力、毎年の経営成果に関する情報提供を受け、経営の現状を計数的に把握した上で経営方針や規模の拡大、経営改善の判断材料として活用・実践してきた。


 「これらの集積された成果として生産技術や収益性、経営の安全性とも高い水準の経営を確立している」(審査委員会)ことや環境保全対策、地域社会における活動など総合的な評価から、大家畜部門の最優秀賞である農林水産大臣賞を受賞したもの。

 ちなみに、繁殖経営の重要技術である分娩間隔はこの15年間で13.6ヵ月から11.8ヵ月に、子牛の総原価はスケールメリット効果も加わって25万2000円から20万5000円に約2割ダウンしている。

 7頭の繁殖牛からスタートしてから約25年が経過したが、今後も土地利用型農業を基本として過去の経験を活かし、さらに繁殖牛を150頭規模まで拡大し、経営を充実させていく計画という。

 長男が会社勤めを辞め、後継者として就農することが決まったので、後継者の意思を尊重しながら適宜アドバイスを行うなど働く環境を整えて、ゆとりある子牛生産と生活環境をつくりあげていくことにしている。

 

 ただ、繁殖牛はすべて運動場付きの開放牛舎で飼養しており、規模がさらに拡大し、雨期には環境悪化の場面も考えられるため、運動場に屋根を付設することが当面の課題。


 

 また、育種価の高い繁殖牛を活用しながら優良牛を自家保留、産肉能力の高い子牛を生産し、商品性の向上に努めることも今後の課題の1つという。














畜産コンサルタント12月号  2002