豚舎周辺には季節の花々や楽しいイラスト入り看板も設置
地域環境との調和を目指した親しみやすい養豚場に
−神奈川県厚木市・(有)厚木市養豚センター−

神奈川県の中央部、丹沢の麓に位置する温暖な気候と豊かな水に恵まれた厚木市は、都心へのアクセスも良く、近年は急激な宅地化が進む。
そんな都市近郊で地域環境との調和を目指し“親しみやすい養豚場”づくりに取り組むのが、厚木市養豚センターだ。

有限会社厚木市養豚センター(神奈川県厚木市三田1936、代表=臼井利次氏)は、市内の養豚農家が出資し設立した珍しい経営といえる。
同センターは当初、厚木市農協の種豚改良普及基地として発足、その後、種豚需要が減少に転じたことから昭和59年に厚木市農協は種豚供給事業から撤退。その施設を利活用するために市内の養豚農家20人の出資によって、厚木市農協から経営権の移譲を受けたことが設立のきっかけという。

設立後、一時は種豚生産を引き継いだもののその後も候補豚の需要は伸びず、昭和60年には種雌豚100頭規模の一貫経営に全面的に切り替えて増頭を図ってきた。現在では、種雌豚160頭規模にまで拡大、通常の豚舎を2階建て豚舎に自ら改造するなどコスト低減の工夫も図る。
経営成績をみると、種雌豚1頭当たりの出荷頭数や飼料要求率も極めて好成績。一昨年からは飼養豚の改良を一層推進するために、外部から良質の純粋種(ランドレース種・大ヨークシャー種)を導入し、自家産のF1豚を生産し、肉質の均一化、肉質の向上を目指している。

労働力は常勤の現場責任者で、出資者でもある佐藤秀市場長と従業員2人。従業員で分娩舎を担当する古性克江さんは、市内の養豚農家の出身だが、県立中央農業高校の畜産科を卒業後、このセンターに就職。一から養豚を学ぶことを決意した。「養豚は地味で体力的にも大変な仕事。でも、楽しくてやりがいのある仕事です」と子豚の世話に奮闘中だ。
同センターでは、地域環境と調和するためにさまざまな工夫をしている。その1つ目は環境対策。都市近郊で畜産を存続させるための条件である畜産環境対策には万全を期す。そして、良質なたい肥を供給することによって、地域とのつながりを持つ。

汚水処理は設立当初から浄化槽で対応、増頭に対してはさらに豚舎間を利用した高度処理装置(リン除去・色度をコントロール)を取り入れ、極めて清澄な処理水で河川放流をすることができる。豚ぷんなど固形物は、強制送風による急速たい肥化装置でたい肥化し、たい肥販売は、耕種農家が利用しやすい無人販売方式をとっている。

「近所には家庭菜園をしている人も多く人気は上々、今のところ処分に困るようなことはない」(佐藤場長)と好調だ。
2つ目は豚舎の周辺にたくさんの季節の花々が植えられているとともに、楽しいイラスト入りの看板が多数設置され、場内が明るい雰囲気であることだ。

「たい肥を買いに来てくれた人や見学に来てくれた小・中学生にも、養豚場を楽しくて、身近にあるきれいな場所として感じてもらいたい」、「普通は養豚場って“臭い”とか“汚い”とかのイメージでしょ。それを変えたいですね」(古性さん)。
「都市近郊の養豚経営を将来に残し、地域と共存することを目標に日々働いています。だからこそ、働く側もいかに楽しく、気持ちよく仕事ができるかを考えており、ゆとりを持って働きたいということからウィークリー養豚を導入し、従業員の定休も確保しています」と佐藤場長は言う。

 今後は、「自分たちで作ったものを地域の皆さんに食べてもらいたいとの願いから、現在、高座豚手づくりハムの移動販売車で取り扱ってもらうことも検討しています。そうすればたい肥利用や見学だけでなく、もっと身近で親しみやすい養豚場になるのではないかと思っています」(佐藤場長)。
“親しみやすい養豚場”づくりは地域に根ざした次の展開を練っている。



畜産コンサルタント5月号  2002