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    優れた生産技術が生み出す高品質牛乳の直販を取り入れた酪農経営

    http://group.lin.gr.jp/grand_prix/con/niigata/

    新潟県

    1 地域の概況

     阿賀野市は新潟県の北東部に位置し、平成16年4月1日に2町2村が合併して誕生した。総面積は192.7k屐⊃邑は約48,000人で、神田牧場のある旧安田町は国道49号線が南北に縦断し、県都新潟市からは20kmの距離にあるが、磐越自動車道安田インターチェンジが設置され、交通体系が整っている。  白鳥の飛来地として国の天然記念物に指定されている瓢湖では、毎年約5,000羽の白鳥が訪れ、また、6月の「あやめまつり」や夏のハス等、四季折々の花が楽しめるため観光客で賑わっている。  同市は、冬期間でも最高積雪が85cm程度と日常生活に支障が出ることはないが、春から秋にかけて、断続的に吹き荒れる局地風「ダシの風」が米作りに時として甚大な被害をもたらすため、地域には酪農が定着し、共同サイロの建設、飼料作物生産への取り組みがなされている。  特に、旧安田町では大正9年に「牛乳販売利用組合」が設立され、「新潟県酪農発祥の地」として古くから酪農が盛んに行われ、乳用牛の改良や乳牛共進会等を通じて新潟県の酪農主産地として先導的な役割を果たしてきている。  昭和62年には酪農家有志により、生乳を原料とした飲用ヨーグルトの生産を行う「ヤスダヨーグルト」が設立されて全国ブランドまで成長し、地域を代表する特産品となっている。  また、平成8年には地域の家畜排せつ物を共同で処理する「グリーンアクアセンター」が稼動して環境保全と土づくりに大きく貢献しており、平成12年に「ゆたかな畜産の里」として旧安田町が農林水産省生産局長賞を受賞する等、地域一体となった取り組みを展開している。

    (1)産業構造(平成17年)

    (2)農業産出額(平成18年・単位:千万円)

    (3)飼養戸数、頭数(平成21年)

    2 経営の概況

    労働力の構成(平成21年7月現在)

    3 経営・活動の推移

    4 経営・生産活動の内容

    (1)自家ブランド牛乳等の販売

     乳価の低下傾向が続く酪農経営の経営発展方向を自家産牛乳の付加価値販売に求め、地域の民間会社社長が会社役員、若手後継者等の経営勉強会を行うための組織としてつくった「阿賀ビジネスサークル」に平成15年から参加し、酪農経営方針や経営理念について勉強するとともに、異業種交流により人脈を築いた。次の2の項以降で述べるように、優れた生産技術を有し、しっかりとした酪農生産基盤を確立した上で、愛情を込めて育てた牛から搾った生乳を自信を持って多くの人に飲んでもらいたいとの思いを、平成20年に牛乳販売業者の協力を得て自家ブランド牛乳(やすだ愛情牛乳)の委託製造、販売に結びつけている。牛乳は宅配を中心として直売所、新潟県庁内の生協、観光施設等で販売している他、洋菓子店と連携してヨーグルトプリン、生キャラメル、ソフトクリームなどの加工品としても販売している。また、地元の村杉温泉、咲花温泉、月岡温泉のホテル等に豆腐やケーキなどの食材として牛乳を提供し、付加価値をつけた販路拡大に努めており、現在、「やすだ愛情牛乳」「神田酪農」の2つの商標を出願し、ブランド力の強化に向けた取り組みを進めている。一方、消費拡大を図るため、インターネットホームページを開設して、牧場、牛乳の紹介、メール会員の募集、注文の受付を行っている。平成21年には、乳類販売業の営業許可を取得し、牛乳、乳製品等の宅配、牛舎脇の直売所での販売に取り組んでいる。その結果、現段階で販売部門での所得は、年間120万円程度が見込める状況となっている。さらに販売量を拡大するため、自ら営業活動を実施するとともに、観光イベント等にも積極的に参加し、消費者と直接交流することにより、牛乳消費拡大への働きかけを行っている。

    (2)アニマルウェルフェアを重視した良質乳生産

    神田酪農は、大きな愛情を持って牛を育て、「とってもおいしい愛情牛乳」をお客様に提供することを理念としており、そのため に、牛の快適性に配慮した飼養管理を徹底して行い、高い生産技術により牛を健康に飼うことを第一として取り組んでいる。まず、平成11年に、それまで給水に使っていた井戸水を上水道に切り替え、200万円近い投資により、ミネラル水を供給する設備を設置している。そのことにより、水の吸収が良くなり、牛が健康になるとともに、すっきりとした甘さとコクのある飲みやすい牛乳が生産されている。搾乳牛の管理面では、カウトレーナーの設置による牛床の乾燥化、さらには、こまめな削蹄の実施により関節炎の予防や牛体(特に乳房)の汚れを防止し、衛生的な搾乳を可能にしている。平成18年には、自動離脱装置付きのミルカーを導入して、ミルカー搬送レールを利用した後ろ搾り方式に切り替え、乳房により近い場所で搾乳することにより、労力と搾乳時の牛のストレス軽減に努めている。また、体調の悪い牛は早期に発見し、症状が悪化する前に獣医師による診断、治療を実施し、健康面には特に気を配っている。これらの取り組みにより、生乳中の体細胞数は年間平均で10万個に低減され、平成18年に、新潟県が推進している「畜産安心ブランド生産農場(クリーンミルク生産農場)」に認定されている。さらに、牛が健康になったことにより、繁殖管理面において発情が明瞭となり、1回授精による受胎率が89.2%と非常に高く、分娩間隔も13.2か月(新潟県指標値13.5か月以内)を達成している。このことにより、繁殖管理に費やす時間を短縮することが可能となり労働生産性の向上につながっている。  

    (3)牛群改良による高能力牛群の整備

     乳牛改良に熱心に取り組んでおり、本人が本格的に酪農に従事した平成5年に、中止していた牛群検定を再開するとともに、牛群審査の受検や平成16年からの酪農経営データベース加入を通じて、データに基づいた牛群改良を進めてきている。  また、本人は家畜人工授精師免許、家畜体内受精卵移植免許を取得し、受精卵移植技術を活用した後継牛の確保、和牛子牛生産にも取り組んでいる。その結果、経産牛のうちの自家産牛割合は83%となり、過去5年間の経産牛1頭当たり年間乳量は11,000kgまで向上し、平成18年から19年までの2年間は、従業員を雇用して3回搾乳を取り入れている。平成20年は、飼料価格高騰により収益性が低下したことから、雇用労働費を削減するため2回搾乳に戻したことと、自家育成牛の初産分娩が多かったことから経産牛1頭当たり乳量は一時的に9,700kgまで低下しているものの、牛群検定結果による産次別の平均乳量を見ると、初産牛は8,432kg、2〜6産牛は10,184〜13,441kgと高い能力の牛群を維持している。さらに、乳量の改善とともに、体型(特に乳房付着)の改良も一体的に進めており、乳頭損傷による乳房炎の発生が減少し、良質乳生産に結びついている。近年では、平成15年に第10回中部日本ホルスタイン共進会で新潟県代表として出品し、ベストアダーを受賞しているほか、平成16年以降も、新潟県ホルスタイン共進会等において、北陸農政局長賞、県知事賞等の数々の受賞歴があり、県内ではトップクラスの高能力牛群への改良を図り、低コスト生乳生産に結びつけている。

    (4)転作田、未利用地を積極的に活用した牧草生産への取り組み

     地域内で高齢化などの理由で耕作できなくなった転作田457a、畑388aを積極的に借地し、自作地を含め合計1,130aでオーチャードグラス、イタリアンライグラスの混播牧草を栽培し、自給粗飼料の確保に努めている。生産した牧草は、全てラップサイレージに調製して1番草を経産牛、2・3番草を育成牛に通年給与を行い、粗飼料の1/3を自給して、所得向上に結びつけている。

    (5)経営計画に基づいた経営改善の実践

     母が複式簿記による記帳を継続して実施してきており、平成16年に父母、本人、妻の4人で家族経営協定を締結してからは、妻が簿記ソフトを利用した経営管理を行い、コスト低減を図っている。平成19年からの3年間は、新潟県が実施するスーパー経営体農業者等育成普及指導事業の対象経営として選定され、中小企業診断士の経営診断を受診して経営計画を作成し、1,000万円以上の所得確保という目標に向けて積極的な経営改善に取り組んでいる。その結果、飼料価格高騰という厳しい情勢の中で、高い所得実績を上げている。

    5 地域農業や地域社会との協調・融和のために取り組んでいる活動内容

    (1)地域の活動

    1 阿賀ビジネスサークル活動

    地域の民間会社社長が会社役員、若手後継者等の経営勉強会を行うための組織としてつくった「阿賀ビジネスサークル」に平成15年から参加し、異業種交流を行っている。当初3か月間は、週1回、搾乳時間である夕方5時からの開催であったが、家族の理解解、協力やヘルパーの活用により参加することができ、現在も継続して年2回の勉強会に参加している。このサークル活動を通じて自分の経営方向のヒントを得て、自家ブランド牛乳の販売につなげているほか、築いた人脈を大切にして乳製品の製造、販路拡大に結びつけている。

    2 わげしょ会活動

    若手酪農家の情報交流の場として、地域で若い人のことを指す方言を名称とした「わげしょ会」を立ち上げ、現在16名の会員が地域を越えて参加し、会員の牛舎巡回、講演会、視察、チーズ作りなどの活動を行い、会員相互のレベルアップ、若手会員の育成に努めている。

    (2)地域循環型畜産の実践

    地域内で高齢化などの理由で耕作できなくなった転作田、畑8haを積極的に借地して牧草生産に活用するとともに、地域内で排出されたモミガラを収集して乳牛の敷料として活用している。また、経営から排出されるふん尿は、平成8年に稼動した地域の共同堆肥センターを100%利用して堆肥化処理を行い、耕種農家と連携した土作りによる地域の環境保全型農業の推進に貢献している。その結果、平成12年に「ゆたかな畜産の里」として農林水産省生産局長賞を受賞する等、地域一体となった取り組みにつながっている。

    (3)研修生受け入れへの取り組み

    毎年、家族の協力により新潟県農業大学校の学生1名を研修生として受け入れ、酪農作業体験を通じて農業後継者の育成に努めている。

    (4)酪農教育ファームの取り組み

    自然と動物を通して、子供が遊んで学べる場をつくり、想像力豊かに育てたいとの思いから、地域交流牧場全国連絡会の会員となり、社団法人中央酪農会議から酪農教育ファームファシリテーターの認証を受けて、牛舎脇に牛乳、乳製品直売所を設置することにより消費者に訪れてもらえる開かれた牧場作りに努めている。

    (5)牛乳を通じた地域産業との連携

    自家産の牛乳を食材とした加工品の開発を行うため、積極的な営業活動により地域の洋菓子店、ホテルと連携し、専門業者のノウハウを活用した商品開発をすすめ、地域産業との連携強化を図っている。

    6 今後の目指す方向性と課題

    (1)牛乳、乳製品の販売量拡大と新製品の開発

    現在、自家ブランドとして販売している牛乳が生産量の4割程度であることから、一層、消費者に自分の牛乳生産に対するこだ わりを理解し、おいしい牛乳を飲んでもらうため、テレビ、新聞等のメディアの活用、ホームページでのメール会員の募集、地域の商工会などのイベントでの牛乳の試飲販売、イベント賞品としての無償提供、積極的な営業活動の実施などの取り組みにより、牛乳の宅配申込者数や直売所数の一層の拡大を図るとともに、牛乳の好きな人を増やし、牛乳消費量全体の拡大に貢献する。また、自家産の生乳を使った商品開発を地域の専門業者と連携して行い、消費者に喜ばれ、かつ付加価値の高い加工品の生産、販売を行う。

    (2)消費者交流活動の継続実施

    消費者が気軽に訪れることができる開かれた牧場を目指し、牧場あるいは各種イベントでの消費者交流を積極的に行い、酪農を通じた人との関わり合いを大切にして、消費者から信頼される生産者となる。

    (3)経営の法人化

    乳類販売業の営業許可を取得し、販売部門が拡大していることから、将来的には生産部門、販売部門を分離して法人化する構想を持っている。販売部門では、現在、乳製品に加えて、健康志向を持っている人に対して富士山の天然水素水、光触媒マスク  等の販売を行っており、牛乳を核にした顧客管理を行い、法人化に向けて牛乳、乳製品以外の商品も取り入れて販売部門の拡大を図る。

    (4)良質乳生産の継続

    消費者に喜ばれるおいしい牛乳を生産するには、牛が健康であることが必要条件であると考えており、飼養管理全般の一層の充実により良質乳生産を継続する。将来的には、乳牛飼養規模は現状を維持する考えであるが、昭和51年に建設した成牛舎が33年を経過して古くなっているので、牛にとってより過ごしやすい環境の牛舎へ建て替える構想を持っている。

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